臨床神経学

症例報告

病初期に他人の手徴候がみとめられたCreutzfeldt-Jakob病の1例

橋本 明子1), 清水 潤1)*, 代田 悠一郎1), 百瀬 義雄1), 後藤 順1), 武田 克彦2), 辻 省次1)

Corresponding author:東京大学神経内科〔〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1〕
1)東京大学医学部附属病院神経内科
2)国際医療福祉大学三田病院神経内科

症例は孤発型クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の68歳男性である.左下肢の随意運動障害で発症後,発症1カ月後から左上肢が自己の意思に反して動く異常運動をみとめた.失行,錐体路徴候,感覚障害の要素はなく,ジストニアや鏡像運動ともことなり他人の手徴候であると考えた.同時期の脳血流SPECTで右半球の血流低下をみとめたが,頭部MRIには異常をみとめなかった.他人の手徴候は,発症2カ月半以降,ミオクローヌス,進行性認知機能低下にともない消失した.本例では,当初,本徴候出現時にはMRIでの異常はなく,診断に苦慮した.まれであるがCJDの病初期に他人の手徴候をみとめることがあり,診断の上で注意すべきと考え報告した.
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(臨床神経, 49:109−114, 2009)
key words:クロイツフェルト・ヤコブ病, 他人の手徴候, SPECT, MRI

(受付日:2008年10月3日)