臨床神経学

症例報告

MRIにて後下小脳動脈瘤と広範な延髄・高位頸髄の信号異常をみとめ,反復性呼吸不全で死亡,静脈性循環障害がうたがわれた86歳女性例

真崎 勝久1)5)*, 大野 雅治1), 前田 浩喜2), 濱田 哲夫3), 岩城 徹4), 友田 宏幸1)

Corresponding author:九州大学大学院医学研究院神経内科学〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕
1)労働者健康福祉機構九州労災病院神経内科
2)同 放射線科
3)同 病理科
4)九州大学大学院医学研究院神経病理学
5)現 九州大学大学院医学研究院神経内科学

症例は86歳女性である.歩行障害にて発症し,10日間の経過で高度の四肢麻痺と球麻痺を呈した.呼吸不全のため人工呼吸器管理がおこなわれた.MRIでは延髄から上位頸髄まで信号異常をみとめ,左延髄外側の後下小脳動脈に嚢状動脈瘤をみとめた.ステロイド治療後に一過性に症状の改善をみたが再度呼吸不全をきたし,全経過約4週間で死亡した.剖検では延髄実質内に軸索腫大をともなう虚血性病変と浮腫性変化をみとめ,病巣が表層に散在する分布や静脈鬱血の所見をみとめたが確定診断にいたらなかった.後下小脳動脈瘤に関連した静脈性循環障害が自験例の主たる病態であったと推察した.
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(臨床神経, 48:568−574, 2008)
key words:後下小脳動脈, 動脈瘤, 延髄, 硬膜動静脈瘻, 静脈性循環障害

(受付日:2007年1月17日)