臨床神経学

短報

健診にて偶然発見された頭痛をともなわない特発性頭蓋内圧亢進症の1例

佐久嶋 研, 辻 幸子, 新野 正明, 矢部 一郎, 佐々木 秀直

北海道大学大学院医学研究科神経病態学講座神経内科学〔〒060-8638 札幌市北区北15条西7丁目〕

症例は47歳女性である.健診にてうっ血乳頭を指摘され,眼科よりの紹介で当科を受診した.神経学的診察では,両側うっ血乳頭をみとめるのみであり,頭痛をふくめ自覚的臨床症状もみとめなかった.髄液検査にて髄液圧440 mmH2Oと著明な上昇をみとめるも,髄液組成,血液検査,画像検査にて頭蓋内圧亢進を呈する明らかな他疾患をみとめず,特発性頭蓋内圧亢進症と診断した.Acetazolamideによる加療をおこない,髄液圧の改善傾向をみとめ,現時点までに視力低下や視野異常をみとめていない.特発性頭蓋内圧亢進症には頭痛をともなわない症例があることと,本症による失明の危険性から考慮し,神経学的診察における眼底検査の重要性を改めて強調したい.
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(臨床神経, 48:430−432, 2008)
key words:特発性頭蓋内圧亢進症, 頭痛, うっ血乳頭

(受付日:2008年1月11日)