臨床神経学

症例報告

不眠と手指振戦を合併した抗VGKC抗体陽性辺縁系脳炎の1例

高堂 裕平, 下畑 享良, 徳永 純, 河内 泉, 田中 惠子, 西澤 正豊

新潟大学脳研究所神経内科〔〒951-8585 新潟市中央区旭町通1番町757番地〕

約1カ月前からの手指振戦と約2週前からの記憶障害を主訴に当科外来を受診した65歳男性例を報告した.記憶障害は約1カ月で軽快したが,検査入院後,ふたたび記憶障害が出現し,不眠も合併した.頭部MRI上,右側頭葉内側にT2強調画像高信号域をみとめ,辺縁系脳炎と診断した.低Na血症をみとめ,髄液細胞増多がないことより,抗VGKC抗体陽性辺縁系脳炎をうたがい,ステロイドパルス療法を施行した.低Na血症や振戦はすみやかに消失し,記憶障害や不眠も徐々に軽快した.後日,血清抗VGKC抗体陽性が判明し診断を確定した.抗VGKC抗体陽性辺縁系脳炎は自然軽快と再発がありうること,不眠や手指振戦を呈しうることを示す貴重な症例と考えられた.
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(臨床神経, 48:338−342, 2008)
key words:辺縁系脳炎, 抗VGKC抗体, 不眠, 振戦, ステロイド

(受付日:2007年10月17日)