臨床神経学

症例報告

SIADHを合併した単純ヘルペスウイルス感染にともなう辺縁系脳炎の1例

栗城 綾子, 石原 健司, 佐藤 博紀, 杉江 正行, 加藤 大貴, 河村 満

昭和大学神経内科〔〒142-8666 東京都品川区旗の台1-5-8〕

症例は79歳女性である.発熱に続き意識障害,痙攣を呈し当科に入院した.意識レベル200 (JCS),項部硬直をみとめ,四肢麻痺であった.髄液検査にて細胞増多と蛋白上昇を,MRIにて帯状回・側頭葉内側の病変を,脳波にて周期性同期性放電 (PSD) をみとめ,ヘルペスウイルス感染による辺縁系脳炎と診断.また血清ナトリウム低下,尿中ナトリウム排泄正常の所見をみとめ,SIADHの診断基準に合致した.水制限とナトリウム投与によりSIADHは改善し,アシクロビル,ステロイド投与により意識レベルも徐々に改善した.辺縁系脳炎にSIADHが合併した機序として,辺縁系の障害による視床下部の抑制解除,または視床下部・下垂体への炎症の波及が考えられた.
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(臨床神経, 48:184−190, 2008)
key words:抗利尿ホルモン分泌異常症候群(SIADH), 辺縁系脳炎, 単純ヘルペスウイルス, MRI

(受付日:2007年3月28日)