臨床神経学

原著

HIV脳症5例の臨床的特徴と経過

橋本 里奈1), 向井 栄一郎1), 横幕 能行2), 間宮 均人2), 濱口 元洋3)

1)国立病院機構名古屋医療センター神経内科〔〒460-0001 名古屋市中区三の丸4-1-1〕
2)同 感染症内科
3)同 臨床研究センター

HIV脳症5症例を報告した.1996年から2005年11月の間に名古屋医療センターを受診したHIV感染症458症例(うちAIDSは127症例)を対象とした.HIV脳症と診断した症例はいずれも高度の免疫不全状態にあり,他の日和見感染症を3症例にみとめた.4症例はHIV感染症が判明したのとほぼ同時期にHIV脳症と診断された.5症例ともHIVに対して抗ウイルス療法は未施行であった.HAARTを施行することで全例で症状の改善をみとめ,死亡はみとめなかった.精神科介入を要したり1例を除いて社会復帰できないなど,行動障害を呈したHIV脳症の機能予後は不良であり,HAARTのみの治療効果は不十分と考えられた.
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(臨床神経, 48:173−178, 2008)
key words:HIV, AIDS, 認知障害, 行動異常, 予後

(受付日:2007年5月11日)