臨床神経学

症例報告

急性に発症し非典型的な病巣分布を示したアトピー性脊髄炎の1例

田中 公二1), 柴田 護1), 野沢 悠子1), 駒ヶ嶺 朋子1), 森田 陽子1), 五味 愼太郎2)

1)国立病院機構東京医療センター神経内科〔〒152-8902 東京都目黒区東が丘2-5-1〕
2)青山学院大学健康管理センター

症例は23歳の女性である.4歳時からアトピー性皮膚炎,小学生時から気管支喘息に罹患していた.200X年7月に歩行障害,下肢感覚異常,膀胱直腸障害を急激に発症し入院した.神経学的所見では,下肢筋力低下,下肢の温痛覚と位置覚障害,下肢腱反射低下ないし消失,および弛緩性の膀胱直腸障害をみとめた.入院時のMRIでは,円錐上部の腫脹がみとめられ,髄液検査では細胞・蛋白・IgGは正常であったが,IgE(8 IU/ml)とMBP(7.8 ng/ml)は高値であった.血液検査ではダニ特異的IgEが強陽性であった.以上の所見からアトピー性脊髄炎と診断した.入院後,ステロイド・パルス療法と血漿交換療法で臨床所見は改善した.第21病日以降に施行されたMRIでT2強調画像にて高信号を示す散在性病変が腰髄〜仙髄レベルに確認された.髄液と血液のIgEおよびアルブミンの測定結果から,IgE髄内産生の可能性が示唆された.髄液IgEを経時的に測定したが,病勢との相関は明らかでなかった.本例のような病巣部位と急性の経過は従来の報告に比し,非典型的と考えられた.
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(臨床神経, 48:130−134, 2008)
key words:アトピー性脊髄炎, 横断性脊髄炎, 脊髄円錐上部, IgE, 肥満細胞

(受付日:2007年7月27日)