臨床神経学

第49回日本神経学会総会

<日本神経学会2007年度学会賞受賞者招待講演>
在宅医療を支える地域ケアシステムの構築―医師として求められてきたもの―

堀川 楊

医療法人朋有会堀川内科・神経内科医院〔〒951-8151 新潟市中央区浜浦町1丁目181番地3〕

1965年新設の新潟大学脳研究所神経内科に入局して以来,根本的な治療法が無く,進行すれば生活障害をきたし,通院も困難になる神経難病等重症神経疾患患者の退院後の在宅ケアは,「臨床科としての神経内科」に課せられた一つの課題と思われた.1978年新潟市の信楽園病院で継続医療室を開設,訪問看護と往診を開始,地域の保健師,ホームドクター,ヘルパーと協働して医療依存度の高い神経疾患患者の在宅ケアを提供した.1987年在宅人工呼吸管理を開始,日本ALS協会の陳情を支援して1990年新潟県の特定疾患在宅患者医療機器購入補助事業を引き出し,新潟市でも難病対策連絡会とその下部組織の新潟市難病ケース検討会が始まり,医療職,介護職の教育の機会となり,種々の有用な制度を生み出した.著者は1997年から訪問看護ステーションと在宅介護支援センターを併設した複合体診療所を開設,退院後の患者の受け皿となり,2000年に発足した介護保険制度を軸に種々の現行制度を駆使して治療困難な患者の在宅療養を支援している.
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(臨床神経, 48:826−830, 2008)
key words:神経難病, 在宅ケア, 地域ケアシステム, 介護保険制度, 複合体診療所

(受付日:2008年5月15日)