臨床神経学

短報

遺残原始三叉神経動脈閉塞により両側大脳脚梗塞をきたしlocked-in syndromeを呈した1例

加藤 裕司1), 名古屋 春満1)2), 古屋 大典1)2), 出口 一郎1)2), 荒木 信夫1), 棚橋 紀夫1)2), 島津 邦男1)

1)埼玉医科大学 神経内科〔〒350-0495 埼玉県入間郡毛呂山町大字毛呂本郷38番地〕
2)埼玉医科大学国際医療センター 脳卒中内科

症例は61歳女性である.進行性の右片麻痺,構音障害を呈し当科に入院した.6日間の経過でlocked-in syndromeに陥った.入院時の脳MRI・MRAでは両側大脳脚に梗塞巣をみとめ,椎骨脳底動脈系の描出が不良であった.第10病日,脳CT上,脳幹周囲の脳槽にくも膜下出血の所見をみとめた.出血源検索のため,脳血管撮影をおこなったところ,右遺残原始三叉神経動脈の起始部に途絶像をみとめ,両側椎骨動脈の後下小脳動脈分岐部以降で描出が不良であった.本例は遺残原始三叉神経動脈閉塞にともない,両側大脳脚梗塞をきたし,locked-in syndromeを呈したきわめてまれな症例と考えられた.

(臨床神経, 47:601−604, 2007)
key words:locked-in症候群, 遺残原始三叉神経動脈, 脳梗塞, くも膜下出血

(受付日:2007年5月11日)