臨床神経学

原著

滋賀県でみいだされた近位筋優位遺伝性運動感覚ニューロパチーの臨床報告

高橋 光雄1), 三井 良之1), 依藤 史郎2), 中村 雄作3), 塚本 美文4), 西本 和弘5)

1)近畿大学医学部神経内科〔〒589-8511 大阪狭山市大野東377-2〕
2)大阪大学大学院医学系研究科保健学
3)近畿大学堺病院神経内科
4)住友病院健康管理センター
5)奈良春日病院神経内科

古くより滋賀県山間部の無医地域で筋萎縮の家族性多発が気づかれていたが,われわれは1984年から数度この群を検診し,最近その予後を検索した.対象は8名(男女各4名).常染色体優性遺伝をもつ姻戚関係の2家系である.発病は平均53.4±8.9歳.近位筋優位萎縮に加えて感覚障害,CK高値,神経原性筋電図,神経筋電位振幅・遠位潜時の異常をみとめた.罹病期間平均16.6(4〜30)年.これまでに7名死亡,死亡年齢は平均69.1±8.2歳.沖縄型近位筋優位遺伝性運動感覚ニューロパチー(HMSN-P)に類似の病像であるが,その特徴である有痛性筋痙攣はなかった.遺伝学的検索ではいまだ明らかな結果は出ていない.

(臨床神経, 47:571−576, 2007)
key words:常染色体優性遺伝, 近位筋萎縮, 感覚障害, 中高年発症, 滋賀県

(受付日:2007年3月31日)