臨床神経学

症例報告

Sjögren症候群を合併し抗神経抗体をともなう進行性の下位運動ニューロン徴候を呈した45歳女性例

清水 文崇, 川井 元晴, 古賀 道明, 佐野 泰照, 根来 清, 神田 隆

山口大学大学院脳・神経病態制御医学 神経内科〔〒755-8505 山口県宇部市南小串1-1-1〕

左下肢の筋力低下にて発症し1年の経過で進行性の四肢筋力低下,筋萎縮を呈し呼吸筋麻痺が顕在化した45歳女性例を報告する.下位運動ニューロン症状のみを有し,神経伝導検査では運動神経活動電位の振幅が低下していたが伝導ブロックはなく,針筋電図では四肢に著明な自発放電をみとめた.さらに核下性神経因性膀胱の合併がみられ,腰椎MRIで馬尾の造影効果をみとめた.唾液腺造影,口唇腺生検にてSjögren症候群を合併していることが確認された.また,ウエスタンブロットにて血清中に約50kDaの脊髄の蛋白に反応する抗神経抗体が同定されたことから,脊髄前角を中心とし,馬尾,末梢神経をふくめた運動神経障害が自己免疫機序により発現し運動ニューロン疾患類似の臨床症状を呈した可能性が考えられた.

(臨床神経, 47:502−506, 2007)
key words:運動ニューロン疾患, 運動神経障害, Sjögren症候群, 自己免疫疾患, 抗神経抗体

(受付日:2006年12月29日)