臨床神経学

症例報告

Epstein-Barrウイルスによる髄膜脊髄神経根炎後,再発性に横断性脊髄炎と複視をきたした1例

越智 雅之, 川尻 真和, 上谷 英里, 伊賀瀬 道也, 小原 克彦, 三木 哲郎

愛媛大学大学院医学系研究科 加齢制御内科学〔〒791-0295 愛媛県東温市志津川454〕

症例は60歳女性である.帯状疱疹後疼痛に対する硬膜外ブロックを受けた4日後から発熱,項部硬直,Th7レベルの横断性脊髄障害および腰髄神経根障害をみとめた.髄液検査で蛋白245 mg/dl,細胞176/mm3と上昇があり,PCRでEBウイルスDNAが陽性であった.脊髄MRIでは,腰髄下部髄膜の造影効果をみとめた.ステロイドパルス療法にて改善したが7,12,16,および26カ月後に横断性脊髄炎の再増悪と複視(外転神経,滑車神経障害)の出現をみとめた.再発時に髄液蛋白・細胞,血清抗EBV抗体価の軽度の変動をともなうこともあった.EBV感染による直接の炎症と感染後の二次的免疫反応により再発性に神経障害をきたした可能性が示唆された.

(臨床神経, 47:348−352, 2007)
key words:Epstein-Barrウイルス, 横断性脊髄炎, 複視, 多発性硬化症, 硬膜外ブロック

(受付日:2007年2月1日)