臨床神経学

短報

酢酸リュープロレリン(LH-RH誘導体)投与後に発症した若年性脳梗塞の1例

藤木 富士夫1), 坪井 義夫2), 山田 達夫2)

1)原三信病院脳神経内科〔〒812-0033 福岡市博多区大博町1-8〕
2)福岡大学医学部内科学第五教室

症例は33歳の女性である.感冒症状後に複視,歩行時ふらつきを自覚し来院した.頭部MRI拡散強調画像にて右視床に高信号病変をみとめ,急性期脳梗塞がうたがわれた.しかし,若年発症,感冒症状の先行,炎症所見などから,血管炎や急性散在性脳脊髄炎などの炎症性疾患も否定できず,脳梗塞急性期治療にステロイドを併用した.その後の検討で,D-dimer軽度高値などの凝固線溶系の異常をみとめ,さらに発症4日前に酢酸リュープロレリン3.75 mgを皮下注したことが判明し,同薬剤と脳梗塞との関連が強くうたがわれた.同薬剤投与中の血栓・塞栓症は知られているが,若年女性に生じた脳梗塞の報告はなく,貴重な症例と思われた.

(臨床神経, 47:234−236, 2007)
key words:酢酸リュープロレリン, LH-RH誘導体, 若年性脳梗塞

(受付日:2006年11月17日)