臨床神経学

症例報告

新しいSOD1遺伝子変異をみとめた家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)の症例:剖検結果をふまえて

河又 千鶴1), 森田 光哉1), 柴田 亮行2), 中野 今治1)

1)自治医科大学神経内科〔〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-1〕
2)東京女子医科大学病理学第一講座〔〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1〕

SOD1遺伝子のエクソン5中のGがCGTTTAに変異し,144番目のロイシン以下がフェニールアラニン,バリン,終止コドンへと変化する新たな遺伝子変異をみとめた家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)の剖検例を経験した.症例は39歳女性で,発症7カ月後に呼吸筋麻痺にて非侵襲的陽圧換気療法導入となるも発症10カ月で死亡した.病理像は脊髄前角の大型神経細胞の高度脱落をみとめるものの,後索や脊髄小脳路には変性をみとめなかった.レビー小体様硝子様封入体やブニナ小体はみとめられなかったが,部分的にユビキチンとSOD1に陽性を示す軸索のcord-like swellingが観察された.

(臨床神経, 47:211−216, 2007)
key words:SOD1遺伝子, 家族性筋萎縮性側索硬化症

(受付日:2006年8月22日)