臨床神経学

症例報告

眼窩尖端症候群を呈した深在性アスペルギルス症にボリコナゾールが奏効した1例

久我 敦1), 大石 健一1), 石田 春彦2), 苅田 典生1)

1)神戸大学医学部附属病院神経内科〔〒650-0017 神戸市中央区楠町7-5-2〕
2)同 耳鼻咽喉・頭頸部外科

71歳男性である.HbA1c 6.9%の未治療の糖尿病があった.左眼窩周囲の疼痛と複視を訴えて入院後,急速な左視力低下を呈した.MRIおよびCTにて左眼窩尖端から左翼口蓋窩へ広がる腫瘤が確認された.上顎洞後壁粘膜の生検標本中にアスペルギルス菌塊が確認され,深在性アスペルギルス症と診断した.培養検査は陰性で菌種の同定はできなかった.新規抗真菌薬ボリコナゾールを使用したところ,左視力は回復しなかったが眼球運動制限と眼窩周囲の疼痛が改善し,外来通院が可能となった.本報告は眼窩尖端症候群を呈した深在性アスペルギルス症にボリコナゾールが有効であった最初の報告である.

(臨床神経, 47:207−210, 2007)
key words:眼窩尖端症候群, 深在性アスペルギルス症, ボリコナゾール

(受付日:2006年8月7日)