臨床神経学

短報

臭化ジスチグミン治療により改善したMELASにともなう慢性偽性腸閉塞

中江 啓晴, 岸田 日帯, 波木井 靖人, 児矢野 繁, 鈴木 ゆめ, 黒岩 義之

横浜市立大学医学部神経内科
現 横浜市立大学附属市民総合医療センター神経内科〔〒232-0024 神奈川県横浜市南区浦舟町4-57〕

患者は34歳のMELASの男性で,痙攣重積のため入院した.入院後は無動性無言となり,胃管による経管栄養を施行していた.胃瘻造設後に腸管の動きが悪くなり,嘔吐,腹部膨満がみとめられるようになり,経管栄養摂取が不可能になった.慢性偽性腸閉塞と診断し,緩下薬,腸管蠕動促進薬を投与したが無効であった.臭化ジスチグミン治療をしたところ,腸管蠕動が良好となり腹部膨満も消失し,腹部単純X線写真も改善した.同様の報告はなく,カハールの介在細胞のアセチルコリン受容体に作用した可能性が考えられた.

(臨床神経, 47:177−179, 2007)
key words:MELAS(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes), 慢性偽性腸閉塞, 臭化ジスチグミン, カハールの介在細胞

(受付日:2006年8月10日)