臨床神経学

総説

ヤコブレフ回路再考

武田 貴裕1)3), 内原 俊記1), 石塚 典生2), 岩田 誠3)

1)東京都神経科学総合研究所 神経病理〔〒183-8526 東京都府中市武蔵台2-6〕
2)同 脳構造
3)東京女子医科大学 神経内科〔〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1〕

ヤコブレフ回路の名は有名だが,その由来はほとんど知られていない.ヤコブレフは情動機能における辺縁系の重要性を強調したが神経回路として証明した訳ではなく,線維連絡の証明はNautaによりなされた.その名が付けられたのは,Livingstonがヤコブレフによる情動―辺縁系仮説を,基底外側辺縁回路と命名したその回路と関連付けたこととも関係するであろう.古典的には記載がない前部帯状回をこの回路に加えることは線維連絡より妥当だが,古典的に記載されている視床背内側核から扁桃体への直接の投射は確認されておらず修正されるべきである.回路は眼窩回・帯状回⇔側頭葉極⇔扁桃体⇒視床背内側核⇔眼窩回・帯状回と理解されるべきである.

(臨床神経, 47:135−139, 2007)
key words:ヤコブレフ回路, Nauta, 基底外側辺縁回路, パペツ回路

(受付日:2006年11月7日)