臨床神経学

症例報告

頸髄硬膜外膿瘍後に脊髄空洞形成をきたした1例

田中 優司1)2), 西田 浩2), 犬塚 貴1)

1)岐阜大学大学院医学系研究科 医科学専攻 神経統御学講座 神経内科・老年学分野〔〒501-1194 岐阜市柳戸1-1〕
2)岐阜県立岐阜病院 神経内科

症例は53歳女性である.急性の発熱,咽頭痛,頭痛,頸部痛にて発症.咽頭・喉頭蓋の腫脹・発赤,頸部の運動制限,髄膜刺激徴候をみとめた.髄液検査で細胞数増多,培養でStaphylococcus aureus,頸椎MRIでC3-8の頸椎椎体後面,C5, 6の椎体・椎体前面にT2高信号病変,造影効果をみとめた.黄色ブドウ球菌性咽頭・喉頭炎から波及した頸髄硬膜外膿瘍,頸椎椎体炎,頸椎椎間板炎,髄膜炎と診断.抗生剤,ステロイド併用にて改善した.後遺症としてC5, 6の椎間板狭小化,骨癒合,C3-7に頸髄空洞形成をみとめた.脊髄硬膜外膿瘍の合併症として脊髄空洞形成はまれであるが,遅発性神経障害をきたす可能性があり注意が必要と考えた.

(臨床神経, 47:90−95, 2007)
key words:脊髄空洞症, 脊髄空洞形成, 頸髄硬膜外膿瘍, 頸椎椎体炎, 椎間板炎

(受付日:2006年6月13日)