臨床神経学

第48回日本神経学会総会

<シンポジウム10-4>機能回復神経学
ボツリヌス毒素による痙縮の治療と分子標的治療

梶 龍兒

徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部神経情報医学(神経内科)〔〒770-8503 徳島市蔵本町2-50-1〕

ボツリヌス毒素は最強の毒素であるが濃度を薄めることにより非常に有効な治療薬となりうる.ジストニアをはじめとする異常な筋収縮・不随意運動のみならず,脳血管障害後遺症や泌尿器科領域,片頭痛をはじめとする痛みの治療などにも有効で,一般に浸透している美容外科的な用途のほかにもさらに臨床応用の範囲が広がりつつある.さらに抗原性が低く,安全性の高い毒素が開発されれば,脳血管障害後遺症としての痙縮の治療をとおして高齢者の医療費・ケアにかかわる社会的なコストを飛躍的に減らすことができる.

(臨床神経, 47:954−956, 2007)
key words:ボツリヌス毒素, NTX, 痙縮, TRPV1, 分子標的治療

(受付日:2007年5月16日)