臨床神経学

短報

赤痢アメーバ性肝膿瘍に脳膿瘍を合併した男性同性愛者の1例

山崎 正禎, 谷口 彰, 永井 盛太, 佐々木 良元, 内藤 寛, 葛原 茂樹

三重大学医学部神経内科〔〒514-8507 三重県津市江戸橋2丁目174番地〕
現 永井病院外科

症例は51歳の日系ブラジル人男性で同性愛者である.発熱,頭痛,右季肋部痛のため近医に入院した.CTで肝膿瘍をみとめ,その内容排液から赤痢アメーバの嚢胞が検出され,赤痢アメーバ性肝膿瘍と診断された.メトロニダゾールの経口投与が開始されたが,頭部MRIで右後頭頭頂移行部に直径約2 cmの腫瘤をみとめたため,当院に転院した.赤痢アメーバ性脳膿瘍と考え,メトロニダゾールの投与を継続した.頭痛は軽快し,脳腫瘤もしだいに被包化して縮小し,4カ月後に消失したので,赤痢アメーバ性脳膿瘍と診断した.近年,本邦で赤痢アメーバ症が増加しているので,脳膿瘍の原因の鑑別において赤痢アメーバを留意しておく必要がある.

(臨床神経, 47:672−675, 2007)
key words:赤痢アメーバ, 脳膿瘍, 肝膿瘍, メトロニダゾール, 男性同性愛者

(受付日:2007年5月14日)