臨床神経学

短報

嚥下造影検査が重症筋無力症増悪の評価に有効であった1例

青木 吉嗣, 山本 敏之, 尾方 克久, 大矢 寧, 小川 雅文, 村田 美穂

国立精神・神経センター武蔵病院神経内科〔〒187-8551 小平市小川東町4-1-1〕
現 国立病院機構東埼玉病院神経内科〔〒349-0196 蓮田市黒浜4147〕

重症筋無力症(MG)の嚥下障害の評価に,固形物の嚥下造影検査(VF)による塩化エドロフォニウム(EC)試験が有用であった64歳の女性例を報告した.62歳時に,頸部筋力低下,複視,左眼瞼下垂でMGを発症し,拡大胸腺摘除をおこなった.64歳時,プレドニゾロン(PSL)の内服で症状は改善していたが,嚥下困難感と開鼻声が出現した.EC試験では嚥下困難感の自覚的な改善に乏しく,開鼻声,僧帽筋の神経反復刺激試験も改善しなかった.VFではEC静注後の固形物の咀嚼嚥下が改善し,MGの増悪と診断できた.PSL増量後,嚥下困難感は消失し,VFで嚥下機能の改善が確認された.

(臨床神経, 47:669−671, 2007)
key words:重症筋無力症, 嚥下障害, 嚥下造影検査, エドロフォニウム試験, 咀嚼嚥下

(受付日:2007年3月14日)