臨床神経学

症例報告

両側頸部血行再建術後に圧受容器反射不全を呈した1例

東 裕美子, 今井 啓輔1), 小田 健一郎, 丹羽 文俊, 牧野 雅弘, 巨島 文子

京都第一赤十字病院急性期脳卒中センター神経内科〔〒605-0981 京都市東山区本町15-749〕
1)京都第一赤十字病院 急性期脳卒中センター救急部
現 京都府立医科大学附属病院神経病態制御学

症例は76歳の男性である.高血圧,多発ラクナ梗塞があり,両側頸部内頸動脈狭窄症に対して4年前に血行再建術を受けた(左側ステント留置,右側内膜剥離術).血圧上昇と失神発作が2年前よりみられるようになった.24時間血圧測定を術前と比較したところ,平均血圧の上昇,高度の血圧変動,頻回の高血圧サージがみられ,head-up tilt試験では低血圧を生じた.血中ノルアドレナリン高値,α1受容体遮断薬による過度の血圧低下をみた.褐色細胞腫の鑑別後,本例の病態は圧受容器反射不全と考えられた.両側の頸部血行再建にあたっては,圧受容器反射不全を念頭において,術後長期間にわたる血圧変動の観察が必要である.

(臨床神経, 47:657−661, 2007)
key words:圧受容器反射不全, 血行再建術, 頸動脈ステント留置術, 頸動脈内膜剥離術

(受付日:2007年5月21日)