臨床神経学

症例報告

集学的初期治療により治癒した成人インフルエンザ脳症の1例

櫻井 岳郎1), 木村 暁夫1), 田中 優司1), 保住 功1), 小倉 真治2), 犬塚 貴1)

1)岐阜大学大学院医学系研究科神経統御学講座神経内科・老年学分野〔〒501-1194 岐阜市柳戸1-1〕
2)同 高次救命治療センター

症例は43歳女性である.インフルエンザウイルスA型感染症による発熱,咳にひき続き,翌日より意識障害が出現し,頭部CTにて著明な脳浮腫をみとめた.血液検査では,DIC傾向を呈した.インフルエンザ脳症と診断し,支持療法と共に特異的治療であるオセルタミビル内服,ステロイドパルス療法,γ-グロブリン大量療法を施行した.また,脳浮腫,DIC傾向をともなっていたことから,特殊治療として低体温療法,アンチトロンビン(AT)III大量療法を施行した.治療は奏功し,後遺症なく治癒した.入院時高値を示した血清IL-6が治療後早期に正常化しており,インフルエンザ脳症の病因とされる高サイトカイン状態をこれらの治療により早期に沈静化できたことが治癒につながったと考えられた.

(臨床神経, 47:639−643, 2007)
key words:インフルエンザウイルスA型, インフルエンザ脳症, 脳浮腫, 低体温療法, IL-6

(受付日:2006年12月19日)