臨床神経学

短報

著明な開口障害を呈し,バクロフェンが奏功した顎口腔ジストニアの1例

井川 正道, 米田 誠, 中川 広人, 栗山 勝

福井大学医学部 第2内科〔〒910-1193 福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23-3〕

症例は67歳,女性である.不随意な強い閉口をともなう,著明な開口障害による摂食障害にて受診した.咽頭や舌の動きは正常であり,顎や頬を触るとわずかに開口できた.表面筋電図にて筋収縮の相反性が消失していた.経過および検査結果より,破傷風,テタニーは否定的であった.特発性顎口腔ジストニア(oromandibular dystonia;OMD)と診断し,GABA誘導体で中枢性筋弛緩作用をもつバクロフェンの内服を開始したところ,著明な改善がみとめられた.バクロフェンは,OMDにおいて,考慮すべき治療の一つであると考えられた.

(臨床神経, 46:661−663, 2006)
key words:顎口腔ジストニア, 開口障害, 表面筋電図, バクロフェン, 内服治療

(受付日:2006年6月14日)