臨床神経学

短報

片側視床外側の小梗塞により失立症のみを呈した1症例

三隅 洋平, 西田 泰斗, 荒木 淑郎

社会保険大牟田天領病院神経内科〔〒836-8566 福岡県大牟田市天領町1丁目100番地〕

症例は82歳女性である.急性発症の座位・起立困難を主訴として当院を受診した.明らかな運動麻痺や感覚障害はみとめないにもかかわらず,座位は不安定,立位は不可能であった.神経症候学的には前庭・小脳系の病変がうたがわれたが,頭部MRIでは左視床後外側に限局した新鮮な小梗塞巣をみとめた.起立困難は漸次改善し,15病日には後遺症を残さず軽快した.視床外側の病変により著明な起立困難を呈した症例は過去に視床性失立症として報告され,前庭小脳からの求心路の障害が推定されているが,本症例も同様の機構による失立症と考えられた.

(臨床神経, 46:649−651, 2006)
key words:視床, 脳梗塞, 失立症, MRI

(受付日:2006年2月2日)