臨床神経学

症例報告

Notch3遺伝子に新たなミスセンス変異をみとめ皮質下出血をともなったCADASILの1例

小鳥居 聡1)*, 後藤 公文2), 近藤 誉之1), 松尾 秀徳2), 高橋 慶吉3), 澁谷 統寿2)

1)長崎神経医療センター 臨床研究部〔〒859-3615 長崎県東彼杵郡川棚町下組郷2005-1〕
2)同 神経内科
3)国立長寿医療センター 血管性認知症研究部
現 小鳥居内科・脳神経内科クリニック〔〒859-3722 長崎県東彼杵郡波佐見町岳辺田郷469〕

症例は,同胞3人に脳血管障害をみとめ,高血圧症既往がない72歳女性である.55歳時より抑鬱と幻覚,反復性頭痛が出現し,歩行障害と認知障害が徐々に進行した.右不全片麻痺を主訴に受診し,頭部MRIで外包と白質に広範な異常信号病変をみとめた.初診から1カ月後の頭部MRIにて,新しい無症候性の左側頭葉皮質下出血をみとめた.Notch3遺伝子解析にて新規のG975C変異を確認し,CADASILと診断した.本例の皮質下出血は,CADASILによる血管病変に起因すると考えた.CADASIL症例に対する予防的抗血小板剤の使用は,慎重を要すると思われる.

(臨床神経, 46:644−648, 2006)
key words:CADASIL, 脳出血, Notch3遺伝子変異

(受付日:2006年6月3日)