臨床神経学

短報

リンパ球性下垂体炎の経過中に肥厚性脳硬膜炎を合併した1例

加藤 大輔, 三竹 重久, 湯浅 浩之, 三浦 敏靖, 鳥居 孝子

公立陶生病院神経内科〔〒489-8642 愛知県瀬戸市西追分町160〕

リンパ球性下垂体炎に肥厚性脳硬膜炎を合併した67歳男性例を報告した.リンパ球性下垂体炎は4年6カ月の全経過で,明らかな硬膜肥厚を欠き,中枢性尿崩症を初発とした.その後,進行性の経過をたどり3年2カ月後ACTH単独欠損症を併発した.4年後,左海綿静脈洞症候群を発症し,MRI所見上びまん性の硬膜肥厚をみとめ肥厚性脳硬膜炎と診断した.その臨床経過より本例の肥厚性脳硬膜炎の一発現機序に,下垂体における慢性炎症の周辺硬膜組織への波及が想定された.

(臨床神経, 46:564−567, 2006)
key words:リンパ球性下垂体炎, 肥厚性脳硬膜炎, 傍トルコ鞍部慢性炎症性疾患, 尿崩症, 海綿静脈洞症候群

(受付日:2006年2月28日)