臨床神経学

症例報告

A型インフルエンザ感染後に急性小脳炎を呈し,MRIにて小脳皮質病変がみとめられた1成人例

石川 剛久1), 藤尾 由美2), 森田 光哉1), 瀧山 嘉久1), 中野 今治1)

1)自治医科大学神経内科〔〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-1〕
2)自治医科大学一般内科

A型インフルエンザ感染後に急性小脳炎を呈した25歳女性を報告した.鼻腔スワブにてA型インフルエンザと診断されオセルタミビル治療後,小脳性運動失調が出現し当科を受診した.髄液では細胞数・蛋白とも増加し,4倍以上のH3N2抗体価変動をみとめた.T2強調MRI画像では小脳皮質の高信号化を,SPECTでは小脳の血流低下をみとめた.以上よりA型インフルエンザ感染にともなう急性小脳炎と診断した.ステロイドパルス療法後,症状は部分的に軽減したが,MRIの小脳皮質病変,体幹運動失調,髄液細胞増多については遷延した.成人においてA型インフルエンザ感染後に小脳皮質病変をみとめた点で貴重な症例と考えられた.

(臨床神経, 46:491−495, 2006)
key words:MRI, 急性小脳炎, 小脳皮質病変, A型インフルエンザ, 成人

(受付日:2005年10月19日)