臨床神経学

症例報告

Friedreich ataxiaの19歳男性例における神経学的症候と,神経生理学検査所見,腓腹神経生検所見

平井 利明, 鈴木 正彦, 栗田 正, 井上 聖啓

東京慈恵会医科大学 神経内科〔〒105-8461 東京都港区西新橋3-25-8〕

症例はGAA異常伸張を確認できた19歳ロシア人男性のFriedreich ataxiaである.5歳発症,18歳時に歩行不能,臨床的には下肢から体幹にかけての脊髄性の失調を主徴とし,square wave jerks,構音障害,筋緊張低下,深部腱反射消失,表在覚鈍麻,下肢振動覚低下,下肢筋力低下・筋萎縮,両側錐体路徴候,上肢における左優位の測定障害,骨格異常,肥大型心筋症をみた.正中神経刺激SEPにおいて左右差をもった後索をふくむ中枢側の障害が示唆された.腓腹神経生検では大径有髄線維密度120本/mm2といちじるしい減少に加え,小径有髄線維密度1,430本/mm2と低下していたが,無髄線維密度は比較的保たれていた.上肢CO2レーザー検査によるAδ線維刺激では通常出現しないC線維の反応をみとめたが,C線維刺激では正常反応であった.またPGP9.5抗体をもちいた外果上方からの皮膚生検では表皮内神経密度は18.0本/mmと低下をみとめなかった.腓腹神経生検に加えてCO2レーザー検査,皮膚生検からも無髄神経線維が冒されていないことを確認しえたことはきわめて重要と思われ報告する.

(臨床神経, 46:485−490, 2006)
key words:Friedreich失調症, 体性感覚誘発電位, CO2レーザー, 腓腹神経生検, protein gene product 9.5

(受付日:2005年1月29日)