臨床神経学

症例報告

MRIにて同時期に視神経交叉と視床下部に病変をみとめ,開頭下生検にて診断しえた中枢神経原発悪性リンパ腫の1例

池田 哲彦1), 原 賢寿1), 山中 龍也2), 梅津 哉3), 高橋 均4), 西澤 正豊1)

1)新潟大学脳研究所神経内科〔〒951-8585 新潟市旭町通一番町757〕
2)同 脳神経外科
3)新潟大学医歯学総合病院病理部〔〒951-8585 新潟市旭町通一番町754〕
4)新潟大学脳研究所病理

症例は63歳女性である.両側の中心暗点と視力低下をみとめ,MRIにて視神経交叉と右視床下部に均一に造影される病変をみとめた.神経サルコイドーシスまたは多発性硬化症の可能性が考えられたため,ステロイドパルス療法を4コース施行した.しかし病変は右内包や側脳室近傍にも徐々に拡大した.開頭下生検を施行し,悪性リンパ腫(lymphoplasmacytic B cell lymphoma)と判明した.視神経交叉,視床下部に同時期に病変をみとめた悪性リンパ腫の例はまれであり,病初期においては画像上,神経サルコイドーシスや多発性硬化症との鑑別が困難であるため,視神経交叉,視床下部病変の鑑別として悪性リンパ腫に留意する必要がある.

(臨床神経, 46:475−479, 2006)
key words:中枢神経原発悪性リンパ腫, 視神経交叉, 視床下部, 神経サルコイドーシス

(受付日:2005年10月12日)