臨床神経学

症例報告

経口ステロイドが有効であった低髄液圧症候群の1例

坂尻 顕一, 大滝 美千代, 吉長 知史, 内山 伸治

石川県立中央病院 神経内科〔〒920-8530 石川県金沢市鞍月2-1〕
現:独立行政法人国立病院機構 金沢医療センター 神経内科〔〒920-8650 石川県金沢市下石引町1-1〕

症例は31歳女性である.後頭部痛,嘔気で入院した.頭痛以外に神経学的異常はなく,1回目の髄液検査で圧は40 mmH2Oで,CTで左上顎洞炎をみとめた.抗生剤や補液,鎮痛剤で改善せず,起立性頭痛が顕性化し,MRIでびまん性硬膜肥厚と造影効果をみとめた.2回目の髄液検査で圧は0 mmH2Oで,RI脳槽シンチグラフィーで早期腎排泄があり,髄液のもれによる低髄液圧症候群と診断した.腰部硬膜外自家血パッチは効果が少なく,プレドニゾロン40 mg経口開始翌日から起立性頭痛が改善した.同剤は約3カ月で漸減中止でき,発病から約3カ月後のMRIで異常所見は消失した.低髄液圧症候群には経口ステロイドが有効な症例が存在する.

(臨床神経, 46:395−399, 2006)
key words:頭痛, 低髄液圧症候群, ステロイド, MRI, RI脳槽シンチグラフィー

(受付日:2005年11月27日)