臨床神経学

症例報告

進行性核上性麻痺と筋萎縮性側索硬化症の臨床的特徴を呈した1例

井上 学1), 小島 康祐1), 里井 斉1), 牧野 ふみ1), 神田 益太郎1), 柴崎 浩1)2)

1)医仁会武田総合病院神経内科〔〒601-1495 京都市伏見区石田森南町28-1〕
2)同 病院顧問

症例は70歳男性である.京都府出身・在住,農業従事者.68歳時に歩行障害と前方への易転倒性で発症し,その半年後から右肩および上肢近位部に筋萎縮をともなう筋力低下が出現した.軽度の上位運動ニューロン徴候,筋電図検査で筋線維自発電位・陽性鋭波をみとめ,筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された.また,パーキンソン徴候,核上性眼球運動障害,見当識障害,記銘力低下,さらにMRIで前側頭葉皮質と中脳被蓋の萎縮をみとめ,進行性核上性麻痺(PSP)と診断された.ALSとPSPの合併はまれであり,紀伊半島およびグアムALS・パーキンソン・痴呆症候群と対比して考察を加えた.

(臨床神経, 46:390−394, 2006)
key words:進行性核上性麻痺, 筋萎縮性側索硬化症, 筋萎縮性側索硬化症・パーキンソン・痴呆症候群

(受付日:2005年11月11日)