臨床神経学

原著

筋萎縮性側索硬化症の発症年齢と初発症状についての検討

下畑 享良, 柳川 香織, 田中 惠子, 西澤 正豊

新潟大学脳研究所神経内科〔〒951-8585 新潟市旭町通1番町757番地〕

当科診療開始以降の38年間に経験した筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症年齢の変化,ならびに70歳以上の発症と定義した高齢発症群の頻度,初発症状について検討した.孤発性ALS症例280人における発症年齢は経時的に上昇し,1年あたり0.459歳の高齢化を示した(r=0.406,p<0.001).高齢発症群の頻度も経時的に増加し,2000〜2003年では31.1%に達した.高齢発症群48人の初発症状の検討では,球麻痺発症は62.5%と高率で,70歳未満の発症群と比較し,球麻痺にて発症するオッズ比は5.40であった.高齢発症例に対する治療,告知および介護・福祉のあり方について検討する必要が考えられた.

(臨床神経, 46:377−380, 2006)
key words:筋萎縮性側索硬化症, 高齢発症, 初発症状, 球麻痺

(受付日:2006年2月18日)