臨床神経学

症例報告

アデノウイルス2型感染が関与した非ヘルペス性急性辺縁系脳炎の1例

永沢 光1), 和田 学1), 栗田 啓司1), 伊関 千書2), 片桐 忠2), 加藤 丈夫1)

1)山形大学生命情報内科(第三内科)〔〒990-9585 山形市飯田西2-2-2〕
2)山形県立河北病院神経内科

症例は31歳の女性である.高熱を主訴に某病院に入院.白血球,血小板減少と高度の肝機能障害を指摘された.6日後,保存的治療にていずれの症状も回復したが,全身性痙攣が出現.その後重積状態となり,当院へ転院.MRI, FLAIR画像にて両側辺縁系に淡い高信号域をみとめ,髄液の軽度細胞増多をみとめた.ウイルスの先行感染にともなう自己免疫的機序を考え,ステロイドパルス療法を開始し,痙攣や意識障害は徐々に改善した.肝障害をきたすウイルスに関し検索したところ,アデノウイルス2型のみ抗体価の有意な上昇をみとめた.本症例の病巣は,両側の大脳辺縁系に限局しており,経過中の髄液所見で蛋白の上昇などの所見をみとめないため,急性散在性脳脊髄炎とはことなり,先行感染に続発した自己免疫的機序により急性辺縁系脳炎が発症したものと推察された.

(臨床神経, 46:322−327, 2006)
key words:急性辺縁系脳炎, 先行感染, 肝障害, アデノウイルス2型, けいれん状態

(受付日:2005年9月7日)