臨床神経学

症例報告

ステロイド療法が著効した,サイトメガロウイルス感染症にともなった重症横紋筋融解症の1例

佐藤 慶史郎1), 米田 誠1), 林 浩嗣1), 中川 広人1), 樋口 逸郎2), 栗山 勝1)

1)福井大学医学部第二内科〔〒910-1193 福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23-3〕
2)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科神経疾患・老化病学

症例は31歳,男性.感冒症状の約1カ月後より,筋肉痛と下肢の脱力が生じ入院した.脱力が増悪し,嚥下困難と呼吸筋麻痺も加わり,人工呼吸管理となった.高CK血症(最高値:24,380 IU/L),血中抗サイトメガロウイルス(CMV)IgM抗体陽性,骨格筋生検上の散在性壊死・再生線維をみとめたが,炎症細胞浸潤はみとめず,CMV感染後の横紋筋融解症と判断した.ステロイドパルス療法およびプレドニゾロン後療法をおこない,CKの正常化と筋力の改善傾向をみとめ,人工呼吸器からも離脱し,腎不全も生じなかった.ウイルス感染に対するステロイド使用に関しては一定の見解が無いが,本症例のように傍感染性の機序が考えられる重症例では,腎保護や救命を目的にステロイドの積極的な使用を考慮すべきである.

(臨床神経, 46:312−316, 2006)
key words:サイトメガロウイルス, 横紋筋融解症, ステロイド療法

(受付日:2005年8月2日)