臨床神経学

短報

急激な意識障害を唯一の症状としたGraves病の1例

永石 彰子1), 雪竹 基弘2), 黒田 康夫2)

1)唐津赤十字病院内科〔〒847-8588 佐賀県唐津市二タ子1-5-1〕
2)佐賀大学内科(神経内科)

症例は79歳の女性である.1カ月の経過でものわすれの症状が出現し,その後急激に意識障害が出現したため入院した.入院後,1カ月以上にわたり動揺性の意識障害をみとめた.TSH値の低下,フリーT3,フリーT4値の上昇があり,TSHレセプター抗体陽性をみとめ,Graves病と診断した.甲状腺亢進症状や甲状腺中毒性クリーゼ症状はみられなかった.抗甲状腺薬を投与したところ,意識障害がすみやかに改善した.高齢者では,甲状腺機能亢進症の身体症状を欠いて,無気力,うつ,痴呆などの精神神経症状や意識障害が主徴候になるGraves病があることを念頭におく必要がある.

(臨床神経, 46:285−287, 2006)
key words:Graves病, 甲状腺機能亢進症, 甲状腺中毒性クリーゼ, 意識障害

(受付日:2005年6月30日)