臨床神経学

症例報告

PINK1遺伝子の欠失をみとめた若年発症パーキンソン病の62歳女性例

渥美 正彦1)*, 李 元哲2), 富山 弘幸2), 佐藤 健一2), 服部 信孝2)

1)馬場記念病院 脳神経内科
現・近畿大学 神経内科
2)順天堂大学 脳神経内科

PTEN-induced kinase 1(PINK1)遺伝子のホモ接合体欠失をともなった若年発症パーキンソン病(early-onset Parkinson's disease:EOP)の症例を報告した.患者は38歳時に歩行障害で発症し,45歳時にはパーキンソニズムが明らかとなったが,L-Dopaへの良好な反応を示し,62歳時にL-Dopa誘発性の下肢ジストニーが出現するまでは歩行可能であった.軽度の認知機能障害と重度の抑うつがあり,左上肢優位に安静時振戦をみとめたが筋強剛はなかった.ジストニーに対してL-Dopaの減量とドパミン作動薬の投与が一時的に奏効したが,6カ月の経過でジストニーが持続性となり,歩行不能となった.これまでにPINK1遺伝子欠失によるEOPの報告はなく,日本人に独特の変異である可能性も示唆された.

(臨床神経, 46:199−202, 2006)
key words:常染色体劣性若年発症パーキンソン病, PTEN-induced kinase 1(PINK1), PARK6, ジストニー, 認知機能障害

(受付日:2005年3月28日)