臨床神経学

症例報告

Predonisolone・cyclophosphamide内服併用療法が奏効した,肥厚性硬膜炎をともなうmultifocal fibrosclerosisの1例

他田 正義1), 小野寺 理2), 原 賢寿1), 田中 恵子1), 高橋 均3), 辻 省次4), 西澤 正豊1)

1)新潟大学脳研究所神経内科〔〒951-8585 新潟市旭町通一番町757〕
2)同 生命科学リソース研究センター脳疾患リソース解析部門
3)同 病理学分野
4)東京大学大学院医学系研究科神経内科〔〒113-8655 文京区本郷7-3-1〕

症例は54歳の男性で,発熱と咳嗽,上肢・体幹の隆起性紅斑で発症した.間質性肺炎と環状肉芽腫症と診断され,ステロイドパルス療法により症状は軽快したが,2カ月後に上強膜炎,滲出性中耳炎,副鼻腔炎,肥厚性硬膜炎を併発した.原疾患は特定されず,一方,組織学的に多臓器に高度の線維化と炎症細胞浸潤をともなう非特異的な慢性炎症性病変をみとめ,multifocal fibrosclerosis(MF)と診断した.ステロイドパルス療法やシクロフォスファミド(CP)パルス療法は効果が乏しかったが,副腎皮質ステロイド薬とCP内服の併用療法が奏功した.肥厚性硬膜炎をともなうMFの難治例では,CP内服併用療法も考慮すべきであると考えられた.

(臨床神経, 46:128−133, 2006)
key words:multifocal fibrosclerosis, 肥厚性硬膜炎, シクロフォスファミド, 内服治療, プレドニゾロン

(受付日:2005年3月7日)