臨床神経学

短報

抗ガングリオシド抗体が関与したと考えられる神経痛性筋萎縮症の1例

塩山 実章1), 赤松 舞子2), 三井 良之1), 佐田 昌美1), 平川 美菜子1), 楠 進1)

1)近畿大学医学部内科学教室神経内科部門〔〒589-8511 大阪府大阪狭山市大野東377-2〕
2)金剛病院神経内科〔〒584-0031 富田林市寿町1-6-10〕

54歳の男性例を報告した.38℃の発熱後,左肩・左上肢の疼痛が出現した.解熱後に左上肢の挙上困難を自覚し,発症3週間後に精査,加療目的で当科に入院した.左三角筋の筋力低下,筋萎縮をみとめた.四肢深部腱反射は正常で,病的反射はない.髄液の軽度蛋白上昇と末梢神経伝導検査でF波の出現低下をみとめた.頸椎造影MRIでは異常をみとめない.発症3週間後の検索でIgM抗GalNAc-GD1a抗体とIgM抗GM2抗体が陽性で,血清のIgMおよびIgG抗サイトメガロウイルス(CMV)抗体が陽性であった.本症例はCMV感染にともなった抗ガングリオシド抗体陽性の神経痛性筋萎縮症と考えられ,抗ガングリオシド抗体が本症例の発症に関与した可能性が高いと考えられた.

(臨床神経, 46:722−724, 2006)
key words:神経痛性筋萎縮症, サイトメガロウイルス, 抗GM2抗体, 抗GalNac-GD1a抗体

(受付日:2006年4月8日)