臨床神経学

短報

Collier徴候を呈したMiller Fisher症候群の1例

宮石 雅浩, 逸見 祥司, 萩原 宏毅, 村上 龍文, 砂田 芳秀

川崎医科大学 神経内科〔〒701-0192 岡山県倉敷市松島577〕

症例は54歳の男性である.感冒様症状の約2週間後に複視とふらつきで発症し,外眼筋麻痺,運動失調,深部腱反射消失の三徴をみとめ,IgG抗GQ1b抗体陽性であったことからMiller Fisher症候群(MFS)と診断した.免疫グロブリン大量静注療法を5日間おこない,症状は改善傾向であった.経過は典型的なMFSであったが,正面視において両上眼瞼の後退(Collier徴候)をみとめた事が特徴的であった.MFSの経過とCollier徴候の出現,消退の時期が一致していたことから,本例におけるCollier徴候はMFSの一症状であったと考えられ,このことからMFSでの中枢病変合併が示唆された.

(臨床神経, 46:712−714, 2006)
key words:Collier徴候, 上眼瞼の後退, Miller Fisher症候群, 抗GQ1b抗体

(受付日:2006年3月6日)