臨床神経学

短報

ポリオ後症候群と鑑別を要した頸椎症性筋萎縮症の1例

磯部 建夫1), 谷口 洋1)*, 松井 和隆1), 井上 聖啓1)

1)東京慈恵会医科大学神経内科〔〒105-8461 東京都港区西新橋3-19-18〕
現 聖隷三方原病院リハビリテーション科

症例は62歳の男性である.3歳時にポリオに罹患し,左上肢,両下肢の筋萎縮,筋力低下をきたした.約58年の症状安定期を経て,61歳時に左上腕三頭筋に限局した筋萎縮,筋力低下が新たに出現した.感覚障害は乏しく,当初,ポリオ後症候群がうたがわれた.しかし画像検査にて第6頸椎レベルでの脊髄左側の圧排をみとめ,頸椎症性筋萎縮症と診断し,安静を保つことで進行を止めることができた.ポリオにより前角細胞数が減少した状態では,頸椎症の軽微な圧迫病変でも強い脱落症状がおこり,前角障害が主体で感覚障害が乏しい頸椎症性筋萎縮症の臨床像を呈したと考えられた.

(臨床神経, 46:59−61, 2006)
key words:頸椎症, 頸椎症性筋萎縮症, ポリオ後症候群, ポリオ, ポリオ後遅発性進行性筋萎縮症

(受付日:2005年1月19日)