臨床神経学

短報

開散麻痺を主徴としたFisher症候群の1例

小黒 浩明, 山口 修平, 安部 哲史, ト蔵 浩和, 小林 祥泰

島根大学医学部 神経・血液・膠原病内科〔〒693-8501 島根県出雲市塩冶町89-1〕

経過中に眼症状として開散麻痺のみを呈したFisher症候群の一例を報告した.症例は53歳男性である.症状は四肢の感覚異常,振動覚低下,球麻痺および開散麻痺である.頭部MRIでは対応する部位に異常信号はみられなかった.治療前の血清にてIgG抗GQ1b抗体とIgG抗GT1a抗体が陽性であったが,単純血漿交換療法にて臨床症状は改善した.開散麻痺の消失には一カ月を要した.開散麻痺の病態を検討するうえで貴重な症例と思われた.

(臨床神経, 45:524−526, 2005)
key words:Fisher症候群, 開散麻痺, 抗GQ1b抗体, 抗GT1a抗体

(受付日:2004年10月25日)