臨床神経学

短報

頭痛から6週間後に虚血症状を呈した椎骨動脈解離の1例

大村 真弘1), 山脇 健盛2), 寺井 正1), 重野 幸次1)

1)静岡市立清水病院 神経内科〔〒424-8636 静岡市清水宮加三1231〕
2)名古屋市立大学大学院医学研究科生物機能制御医学神経病態学(名古屋市立大学神経内科)〔〒467-8601 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1〕

症例は43歳女性である.高血圧のため内服加療中であった.右項部〜後頭部痛が出現して約6週間後に左上下肢のしびれ,および脱力感が出現した.神経学的には左不全片麻痺をみとめた.頭部MRIでは右延髄内側部の梗塞が確認された.血管造影では右椎骨動脈にpearl and string signをみとめ動脈解離と診断した.脳動脈解離例においては頭痛と虚血症状が同時か,あるいは頭痛が先行した後虚血症状が出現してもほとんどは数日以内である.近年,脳梗塞の原因として頭頸部動脈解離が注目されているが,脳梗塞例,とりわけ椎骨脳底動脈系の脳梗塞においては,数週間までさかのぼっての頭痛に関する詳細な問診が必要である.

(臨床神経, 45:521−523, 2005)
key words:脳梗塞, 動脈解離, 椎骨動脈, 延髄

(受付日:2004年9月30日)