臨床神経学

短報

左上肢の強直性発作のみをきたした心原性脳塞栓症の1例

菅 智宏1), 河野 浩之1), 寺崎 修司2), 橋本 洋一郎1), 永沼 雅基1), 平野 照之3), 内野 誠3)

1)熊本市立熊本市民病院神経内科〔〒862-8505 熊本市湖東1丁目1番60号〕
2)同 脳卒中診療科
3)熊本大学大学院医学薬学研究部神経内科学分野〔〒860-8556 熊本市本荘1丁目1番1号〕

症例は61歳男性である.2002年11月左顔面・上肢の一過性のしびれと脱力をきたし,近医にて一過性脳虚血発作と診断された.アスピリンを内服したが,1カ月で中止していた.2003年3月6日15時頃仕事中に,左上肢の強直性発作(約5分間持続)が出現した.近医を介して同日17時に当院を受診した.同日当科入院時には,神経学的所見にて異常をみとめなかった.頻拍性心房細動をみたため,同日頭部MRI拡散強調画像を施行した.右頭頂葉皮質に高信号域(T2強調画像では異常なし)がみとめられた.本症例ではonset seizureのみをきたした心原性脳塞栓症であり,急性期再発予防目的でヘパリンの持続点滴とワルファリンで加療をおこなった.脳梗塞のハイリスク群では一側上肢の痙攣性発作のみでも積極的に脳梗塞の検索をおこなう必要があると考えられた.

(臨床神経, 45:518−520, 2005)
key words:強直性発作, 心原性脳塞栓症, onset seizure, 心房細動, 拡散強調画像

(受付日:2004年9月6日)