臨床神経学

症例報告

一側性延髄外側梗塞にともない閉塞性神経因性膀胱をきたした1例

永沼 雅基1), 稲富 雄一郎1), 米原 敏郎1), 橋本 洋一郎2), 平野 照之3), 内野 誠3)

1)済生会熊本病院脳卒中センター〔〒861-4193 熊本市近見5-3-1〕
2)熊本市立熊本市民病院神経内科
3)熊本大学大学院医学薬学研究部神経内科学分野

排尿障害の既往歴を有さない59歳の男性が,構音障害,嗄声,左不全片麻痺を主訴に当院に入院した.頭部MRIでは左延髄外側梗塞をみとめた.入院後排尿障害をみとめ,尿流動態検査では無緊張性膀胱を呈していた.下部尿路系に通過障害をきたす疾患や糖尿病などの自律神経障害をきたしうる疾患はみとめず,延髄より下の脊髄・末梢神経レベルでの神経障害は否定的であった.本症例の排尿障害に一側性延髄外側梗塞が関与した可能性が示唆された.

(臨床神経, 45:431−436, 2005)
key words:排尿障害, 延髄外側梗塞, 橋排尿中枢, 橋排尿抑制領域, 無緊張性膀胱

(受付日:2004年9月13日)