臨床神経学

症例報告

Edaravone(MCI-186)がMELAS脳卒中様発作時の病変拡大抑制に有効であったと考えられる1例

前田 憲吾, 辰巳 万里子, 田原 将行, 村田 佳子, 川合 寛道, 安田 斎

滋賀医科大学神経内科〔〒520-2192 滋賀県大津市瀬田月輪町〕

3243変異をもつ32歳女性が,頭痛・嘔気・視力低下・地誌的健忘を主訴に受診した.頭部CTでは新病変はなかったが,脳卒中様発作再発をうたがい直ちに大量ubiquinone(210 mg/日)とtocopherol nicotinate(300 mg/日)を投与した.第5病日より意識が低下し,MRIにて右後頭葉にT2高信号病変をみとめ,家族の同意の下,edaravone(30 mg,2回/日,14日)を追加した.Edaravone投与9日後(第13病日)より意識と視力は改善し,MRIでも病巣は右頭頂葉の軽微な拡大に留まり,病巣の浮腫や大きさは改善していた.病巣からのフリーラジカルによる酸化ストレス亢進が病巣拡大に関与していると考えられ,edaravoneは脳卒中様発作による脱落症状を最小限におさえる可能性が示唆された.

(臨床神経, 45:416−421, 2005)
key words:MELAS, エダラボン, 病巣拡大, 酸化ストレス

(受付日:2004年5月19日)