臨床神経学

症例報告

頭頂葉病変による肢節運動失行の1例

細見 明子1), 吉川 健治1), 山田 惠2), 中川 法正1)

1)京都府立医科大学大学院医学研究科 神経病態制御学〔〒602-8566 京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465〕
2)京都府立医科大学大学院医学研究科 放射線診断治療学

症例は75歳男性である.右頭頂葉梗塞により,左上肢の運動が拙劣となった.客体操作時にpreshapingを欠き,視覚による巧緻運動障害の補正も困難であった.MRI,fiber-trackingによる錐体路・感覚路の推定,磁気刺激,および体性感覚誘発電位により,病変がBrodmannの1・2・5・7野をふくみ,3野におよばないことが示された.中心領域の後方病変による肢節運動失行では障害の視覚補正をともなう.広範な頭頂病変を有する本症例は能動運動覚障害を合併したため,視覚による補正が機能しなかったと思われる.肢節運動失行の範疇を越え,頭頂葉性行為障害の一例と考えるべきである.

(臨床神経, 45:411−415, 2005)
key words:肢節運動失行, fiber tracking, 中心領域, 体性感覚誘発電位, preshaping

(受付日:2003年4月7日)