臨床神経学

症例報告

非肝硬変性門脈大循環短絡症による肝性脳症と症候性てんかんを合併し,門脈大循環短絡症に対しバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術を施行した1例

柴田 歩1), 林 茂1), 野口 もえ子2)

1)富山市民病院内科〔〒939-8511 富山県富山市今泉北部町2番地の1〕
2)福井県立病院神経内科〔〒910-8526 福井県福井市四ツ井2丁目8-1〕

症例は66歳の男性である.脳動静脈奇形術後より症候性てんかんを発症し,1996年よりバルプロ酸,フェニトインを内服していた.2001年11月,けいれん発作にて当院内科入院,高アンモニア血症がみとめられ,バルプロ酸の副作用がうたがわれた.肝機能は正常であった.バルプロ酸休薬後も高アンモニア血症をともなう意識障害をくりかえしたため,2002年1月腹部造影CTを施行,脾腎短絡路がみられた.ラクツロース投与は奏効せず,2002年10月9日,バルーン下逆行性経静脈的塞栓術による短絡路閉鎖を施行し,高アンモニア血症および臨床症状の改善がみとめられた.

(臨床神経, 45:341−345, 2005)
key words:肝性脳症, 門脈大循環短絡症, バルーン下逆行性経静脈的塞栓術, 高アンモニア血症

(受付日:2004年3月9日)