臨床神経学

症例報告

MRIにより三叉神経を介した感染が考えられた単純ヘルペス脳幹脳炎の1例

吉留 嘉人, 林 茂昭, 丸山 芳一

今給黎総合病院神経内科〔〒892-8502 鹿児島県鹿児島市下竜尾町4-16〕

症例は24歳男性である.発熱,咽頭痛や右三叉神経領域の皮疹出現の4日後に頭痛,傾眠傾向や幻覚症状が出現した.神経学的には右one-and-a-half症候群や右末梢性顔面神経麻痺の多彩な脳幹症状を呈した.頭部MRIにて右三叉神経入口部から脳幹や小脳に拡がる病変をみとめ,髄液抗単純ヘルペスウイルス(HSV)-IgM抗体(EIA法)および血清抗HSV-1型抗体(NT法)が陽性であったためHSV-1型脳幹脳炎と診断した.入院時よりすみやかにアシクロビル,ステロイドやγグロブリンを投与し,神経症状と頭部MRI所見の著明な改善がみとめられた.本症例のMRI所見からHSV-1の三叉神経を介した脳への感染が考えられた.

(臨床神経, 45:293−297, 2005)
key words:単純ヘルペスウイルス1型, 脳幹脳炎, 三叉神経, 単純性疱疹, アシクロビル

(受付日:2004年4月20日)