臨床神経学

原著

Pioglitazone長期投与による筋強直性ジストロフィーの糖尿病治療

山本 敏之, 大矢 寧, 磯部 建夫, 白藤 俊彦, 尾方 克久, 小川 雅文, 川井 充

国立精神・神経センター武蔵病院神経内科〔〒187-8551 東京都小平市小川東町4-1-1〕

筋強直性ジストロフィー(DM1)に合併する糖尿病に対しインスリン抵抗性改善薬pioglitazoneの効果を検討した.糖尿病を合併したDM1患者8人で,うち3人はglibenclamideを内服していたが血糖コントロールは不良であった.Pioglitazone 15 mg連日投与(glibenclamideは中止)で平均15.4±9.6カ月間観察し,血糖コントロールは良好で,低血糖発作や副作用は生じなかった.75 g経口ブドウ糖負荷試験では,糖負荷後の血糖は全例で低下し,インスリン分泌量は4人がほぼ不変,4人が低下した.DM1患者の糖尿病には,とくに反応性にインスリンが過分泌の傾向にある患者では,pioglitazoneが有効であると考えた.

(臨床神経, 45:287−292, 2005)
key words:筋強直性ジストロフィー, 糖尿病, インスリン抵抗性, チアゾリジン誘導体, 75 g糖負荷試験

(受付日:2004年4月5日)